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特別縁故者への相続財産の分与

 

被相続人の相続人不存在の場合、その手続きの流れの中で、特別縁故者は、家庭裁判所に対して、被相続人の財産の分与の請求ができる。
そして、家庭裁判所は、相当と認めるときは、特別縁故者に対して、相続財産の全部または一部を分与することができる。(民法第958条の3)

被相続人が不動産を所有しており、特別縁故者に対して、その不動産の分与が認められた場合、以下の登記手続きが発生する。

(1)相続財産への所有権登記名義人氏名変更登記
(2)特別縁故者に対する所有権移転登記

被相続人をAとする。
(1) 所有権登記名義人氏名変更登記
相続人不存在により、相続財産は法人となり(民法第951条)、家庭裁判所により、相続財産管理人が選任される(民法952条第1項)。
具体的にいうと、被相続人Aの相続財産は、「亡A相続財産」となる。
また、相続財産管理人が選任されたら、家庭裁判所から、相続財産管理人が選任された審判書が交付される。
この審判書は、登記で使用する(登記原因証明情報、代理権限証明情報)。

不動産登記上、この亡A相続財産への登記は、「所有権登記名義人氏名変更登記」とされているので、所有権登記名義人を「亡A相続財産」と変更する所有権登記名義人氏名変更登記を申請する。

相続財産管理人選任審判書に記載されている被相続人の最後の住所と所有権登記名義人の住所とが違う場合は、この住所の変更登記も必要となる。
従って、この場合は、「所有権登記名義人住所氏名変更登記」を申請することとなる(住所の繋がりをつける戸籍の附票等が必要)。

この変更登記の原因は、「年月日相続人不存在」(年月日はAの死亡日)。
被相続人の死亡日は、相続財産管理人選任審判書に記載されている。
申請人は、相続財産管理人。

(2) 特別縁故者に対する所有権移転登記
特別縁故者への財産分与は、家庭裁判所の審判となり、特別縁故者への財産分与が認められたら、家庭裁判所から、その旨の審判書が出る。
また、審判なので、確定する必要がある。
審判確定によって、特別縁故者への相続財産の分与が確定し、この確定日が、登記原因日付となる。
この所有権移転登記の登記原因は、「年月日民法第958条の3の審判」(年月日が審判確定日)。

特別縁故者への相続財産分与の審判書正本(確定証明書付)は登記原因証明情報であり、これを添付すれば、特別縁故者は単独で登記申請が可能となる。
なので、家庭裁判所で、確定証明書を取っておく必要がある。

また、所有権移転登記なので、登録免許税は、不動産の評価額を元に算出する。
なので、評価証明書が必要となるが、特別縁故者への相続財産分与が確定した以降は、特別縁故者が不動産の所有者となるので、評価証明書は特別縁故者が取得することができる。
この場合は、特別縁故者であることの証明として、家裁の相続財産分与の審判書も必要となる。


司法書士がこれらの登記を受任した場合。
特別縁故者が確定証明書を取得していなかったら、審判の確定証明書の申請書を司法書士の方で作成するか、または、家裁のWebサイトで申請書をダウンロードできるならそれを使い、特別縁故者に申請書等に署名・押印をしてもらい、司法書士の方で確定証明書の申請・受領をしてもいいでしょう。
なお、確定証明書には、収入印紙150円が必要。

評価証明書も、司法書士の方で取るならば、特別縁故者から委任状をもらい、特別縁故者への相続財産分与の審判書(と確定証明書)を添付して、市役所等に申請して取得する。

(1)の必要書類
相続財産管理人の選任審判書
相続財産管理人から司法書士への委任状

(2)の必要書類
特別縁故者への相続財産分与の審判書正本と確定証明書
特別縁故者の住民票
特別縁故者から司法書士への委任状
(特別縁故者の単独申請とするため、登記義務者(亡A相続財産)の書類は不要)

登録免許税の還付

5月になって、新元号「令和」が始まった。

登記申請を取下げたり、あるいは登録免許税を納めすぎていた場合は、登録免許税の全部または一部の還付を受けることができる。
この還付金は、登記申請代理人が代理受領できるが(還付通知請求・申出書を記載し、署名押印して法務局に提出する)、この場合は、委任状が必要。
しかし、登記申請時の委任状に、代理人に還付金を受領する権限を与えている記載がある場合は、新たに委任状は不要とのこと。
この場合、申出書の備考欄の添付書類の「還付金の代理受領権限を証する委任状」については、「申請時の委任状を援用」と記載するとのこと。

というわけで、登記申請の委任状には、「登録免許税の還付金を受領すること」といったような文言を必ず入れておいたほうがいい。


登記申請時の登録免許税を、収入印紙で納付して、その登記を取下げた場合。
登録免許税の還付の他に、「再使用証明」というものもある。
登記申請を取下げたら、消印された収入印紙が返ってくるが、それを再度使用できるようにするのが、再使用証明。
但し、再使用証明が使えるのは、同じ法務局内での登記申請に限られ、有効期間は1年。

当事者全員が成年被後見人の相続登記

当事者全員が、成年被後見人という相続登記があった。
亡くなった被相続人と相続人が全員成年被後見人であり、しかも、成年後見人は、全て専門職だった。
あり得なくもないのだが、実際直面すると、ちょっと驚く。

注意点というか、これはどうなんだ?ということ。

(1)代理権
成年後見だったので気にしなかった。
普通に、成年後見人から、相続登記の委任を受ければいい。

(2)遺産分割協議書の押印
後見登記事項証明書上、専門職後見人の住所が事務所になっている場合の、遺産分割協議書の押印・印鑑証明書は、個人の実印・市区町村長発行の印鑑証明書になるのか、あるいは、東京家庭裁判所(同立川支部も)への届出印とその印鑑証明書でいいのか。

東京家裁では、成年後見人等の印鑑証明書の運用が始まったので、こういう疑問が生じるわけである。
なお、東京家裁の案内によれば、この家裁の印鑑証明書は、不動産登記用とのこと。

結論からいえば、今回は、事前に法務局に照会をし、「家庭裁判所への届出印の押印と家庭裁判所の発行するその印鑑証明書」でいいということになった。
(法務局への照会のときは、家裁の印鑑証明書でいいと考える、という私見を付した。)

遺産分割協議書において、家裁の印鑑証明書でいいかどうかについては、申請前に、法務局に確認しておいたほうがいいと思われる。
また、今回は、不動産登記のみだが、預貯金等の相続手続もある場合も、家裁の印鑑証明書でいいのかは不明である。


(3)被相続人の同一性の証明のための書類
今回、被相続人の戸籍、戸籍の附票(除附票、改製原附票)、除票を取っても、登記上の所有権登記名義人の住所と被相続人の最後の住所が一致しなかった。
登記済証もないという。
そうなると、「同一人であることの上申書」と「固定資産税の納税通知書」ということになるかなと思った。
今回の場合、幸いにも、被相続人とその配偶者(つまり相続人)が同じ成年後見人だったので、その成年後見人に納税通知書があるかどうかを聞いてみたら、成年後見人はそれを持っていたので、それをもらった。
そうしたら、あっ、と思った。

専門職が成年後見人になった場合、書類の送付先を、成年後見人の事務所にする。
なので、この納税通知書の宛先が成年後見人の住所になっていたのである。
納税通知書には、「成年後見人の事務所・被相続人の氏名・成年後見人の氏名」が記載されており、被相続人の住所の記載がない。
この場合でも、納税通知書でいいのだろうか。

そういうわけで、被相続人の同一性確認のための書類について、法務局に相談をした。
被相続人の成年後見人が、その配偶者(つまり相続人)の成年後見人もしている(ようは、夫婦で同じ人が成年後見人になっていた)、という事情も述べた。

この場合は、相続登記なので被相続人や相続人の戸籍謄本等を添付したうえで、「同一人であることの上申書、納税通知書、配偶者の後見登記事項証明書」ということになった。

代表者が変わっていた〜抵当権抹消登記〜

法務局より電話。
「代表者が代わってまっせ」

先に申請した抵当権抹消登記につき、登記義務者(抵当権者)の代表者が代わっていた。
ということで、補正。

抵当権抹消登記の事由が発生したのが3月。
こちらに話があったのも3月。
登記申請は4月になってからした。

抵当権抹消登記に関する書類が、金融機関から債務者に送付される。
それから抵当権抹消登記を申請するので、どうしても、時間があいてしまう。
従って、その間に、抵当権者の代表者が代わることだってあろう。

不動産登記において、登記申請人が会社等の場合、会社法人等番号を提供すれば、資格証明書等の書類の添付を省略することができるようになった。
そのため、金融機関から送付されてくる抵当権抹消書類の中に、抵当権者の資格証明書や履歴事項証明書はなくなった。

抵当権者の商号・本店・代表者については、委任状に記載があるが、司法書士としては、登記申請書に代表者の記載も必要でもあるので、資格証明書等で確認したい。
現在の抵当権者の商号や本店が、抵当権設定登記時のものから変わっている場合は、なおさらである。
そういうわけで、抵当権者の資格証明書が送られていなければ、インタ-ネットで登記情報を取って確認することとなる。
なお、これは有料なので、依頼者にかかることとなる。

今回、抵当権者の登記情報を取ったのが、3月末。
それから登記申請をするまで、10日ほど時間があいたのだが、その間に、抵当権者の登記情報は取っていなかった。
正直、10日間くらしかあいていないし、その間に代表者が代わるとも思っていなかったので、「代表者が変わった」と聞いて、ビックリしたのだが、再度登記情報を取って見たら、4/1付けで新しい代表取締役が就任していた。
ああ、年度が変わる時期にあわせたのか…。


今回の抵当権抹消登記における変更前の代表者名の書類は、以下のとおり。
 登記申請書(オンラインなので申請情報)
 登記原因証明情報
 委任状(登記権利者、登記義務者)

登記原因証明情報については、抵当権抹消登記の事由が発生したのは3月で、その日付が記載されており、その時点では代表者は変わっていないので、これは問題なし。

登記義務者(抵当権者)の委任状については、抵当権者が作成したものだが、委任者は変更前の代表者で、最初から3月の日付が記載されていたので、これは問題なし。
(日付が空欄で、申請前にこちらで4月と記載していたら、アウトだった。)
(ちなみに、抵当権者の委任状の日付が空欄で交付され、申請前に司法書士の方で日付を記載する方が多いかも。)

登記義務者の委任状については、私の方で作ったが、旧代表者名で作ってしまっていたため、補正となった。
捨印をいただいていたので、修正。

登記申請情報については、補正コメントで、
(1)代表者の氏名の訂正
(2)代表者の代表権が消失したこと、代表権を有していた期間を記載
とのことだった。
オンラインで申請したので、補正もオンライン。
ということで、補正コメントに従って、補正をした。

こういうこともあるんだと…。


抵当権抹消登記委任時の代表者(旧代表者)と登記申請時の代表者(新代表者)が違う場合、抵当権抹消登記手続きはどうなるか。

この場合、不動産登記法の規定により、旧代表者の会社の代表権は消滅しているが、「登記申請代理権は消滅しない」とされているので、旧代表者の委任状等を添付して、抵当権抹消登記を申請することができる。
そして、この場合、申請書に、旧代表者の代表権が消滅したこと、旧代表者が代表権を有していた期間を記載する。
なので、旧代表者が代表者であることが分かる閉鎖登記簿謄本や履歴事項証明書が必要となるが、登記申請時に会社法人等番号を提供すればこれが省略できる場合であれば、省略できる(今回は、省略できた)。
また、今回は、登記申請情報の登記義務者(抵当権者)の代表者の氏名を新代表者に補正した。
が、旧代表者を記載するという見解もあるようだ。

不動産登記の郵送

不動産登記は、郵送で申請できる。
オンライン申請のときの添付書類も、法務局に郵送によって提出できる。
また、登記識別情報、登記完了証、原本還付書類等、登記完了後に受取る書類がある場合、これも郵送で受け取ることができる。
申請時や添付書類送付時に、返信用封筒(切手を封筒に貼るか、切手を入れておく)も同封する。

というわけで、不動産登記の申請書、添付書類を、法務局に郵送する、そして登記識別情報等を返送してもらうわけだが、何で送るか、である。
細かい話だが。

郵送申請は、「書留郵便」となっている。
送付の封筒には、「不動産登記申請書在中」と記載する。
返信は、書留郵便か信書便となっている。
なお、本人申請の場合、本人が自然人の時は、本人限定受取郵便となるとのこと。
不動産登記の申請様式について(法務局のサイト)
不動産登記に関するよくある質問(法務局のサイト)
Q1 郵送で登記申請後、登記識別情報の交付や原本還付書類の返還を請求するには、送付の方法をどのようにすればいいですか。


ところで、レターパックプラス(赤色、510円)、レターパックライト(青色、360円)というものがある。
結構重宝するものである。
このレターパックのうち、レターパックプラスは、不動産登記において使用できる。
レターパックプラスは直接手渡しで受領印が必要だが、レターパックライトは受取り先の郵便受けに投函され、直接手渡しではない。
不動産登記関係の書類は、受取りが必要なので、ライトは使えない。

書留とレターパックプラスの違い
(1)書留は持っている封筒で出せるが、レターパックプラスは専用の封筒なので、郵便局に買いに行かなければならない。
(2)書留には保証があるが、レターパックプラスにはない。
(3)レターパックプラスは、速達の早さらしい。書留の場合、速達は別料金。
(4)書留は郵便局の窓口に出しに行かなければならないが、レターパックプラスはポスト投函可能。
(5)書留は送付物の重さによって料金が変わるが、レターパックプラスは4キロまで一律510円。

事務作業的違い
(1)レターパックプラスは、4キロまでの制限があるが、料金が一律なので、送料の計算がしやすい(不動産登記申請で4キロを超えることは、まずないでしょう)。
(2)返信を書留にする場合、返信用の切手を用意しておかないといけないが、レターパックプラスは、その封筒を入れておくだけでいい。
(返信時の送料が不明なため、送料を予想して切手を返信用封筒に貼っておいたり、返信用封筒には貼らずに、切手を多めに入れておいたりする。)

私はどうしているかというと、書留だったり、レターパックプラスだったりと、送るものによって、使い分けている。
保証がついているので、書留を使っているが、レターパックプラスも使う。



書留・簡易書留とレターパックプラスは、共に、受取りは直接手渡しで受領印が必要。

レターパックプラスは、速達並の早さらしい。
確認したことはないが、その早さは実感したことはある。
例えば、夜にレターパックプラスが配達されてきたので、受け取って消印を見たら、その日になっていた。
つまり、レターパックプラスを出したその日に、事務所に届いたのである。
おそらく、立川市内の郵便局で、その日の午前中とか昼間くらいにレターパックプラスを窓口で出したら、その日の夜に事務所に届くようである。
そんなくらいの早さ。

レターパックプラスは、ポストに投函でもいいので、この点は、なかなか窓口に行けない場合にいい。
しかし、私は、レタ-パックでも、窓口で出すようにしている。
というのも、レターパックプラスをポスト投函したが配達されなかったという事故が起こったことがあると聞いたので。

近所の郵便局が閉まっていて、窓口で出せないこともある。
しかし、幸い、立川駅前には立川郵便局という本局があり、近くの郵便局が閉まっている時間帯でも、本局はほとんど開いているので、そういうときは、本局まで出しにいく。
あるいは、翌日の朝に、近所の郵便局に出しに行く。

普通郵便なら、ポスト投函でもいいが、ポストごとによって回収時間が異なるため、これもなるべく窓口で出すようにしている。
立川郵便局の本局前のポストは、回収時間が多いので、近くの郵便局が閉まっている時間帯のときは、本局前のポストにまで出しに行く。
あるいは、翌日の朝に、近所の郵便局に出しに行く。

夜間の郵便局の本局、まあまあ混んでいる…。

新元号・「令和」

本日、新元号が発表された
「令和」とのこと。
その中継と安倍首相の談話をネットでみていた。
なかなか繋がらなかったが。

典拠はどこだろうと思って聞いていたら、「万葉集」の梅の歌の序文とのこと。
なんと、万葉集。
確か、これまでの元号の典拠は四書五経等の漢籍だったので、典拠が我が国の書物なのは初めてではないか…と思った。
そう思っていたら、安倍首相記者会見でこのことの質疑応答があり、国書典拠は初と言っていた。
ただ、ネットで見ていたら、万葉集のこの序文の元は、「文選」という漢籍らしい。

ところで、報道を見ていると、これまでの元号の典拠を「中国の古典」と言っているが、これは正確ではない。
中国(中華人民共和国)は、1949年にできた新しい国。
周や漢は、中国ではない。
一方、我が国は、万葉集が作られた頃も日本で、ずっと日本が続いている。

早速、パソコンのIMEに「令和」を登録した。
5/1に改元となる。

そんな4月1日は、新年度の始まりの日。
平成31年度、2019年度。
5/1以降は、令和初年度ともなる。

所有権移転登記の登録免許税は、不動産の評価額に基づいて計算をする。
この評価額は、申請する「年度」のものとなる。
従って、本日から所有権移転登記を申請する場合は、平成31年度の評価額に基づいて登録免許税を算出することとなる(平成31年度の評価証明書を取ることとなる)。

抵当権抹消登記

抵当権抹消登記で抵当権者(金融機関)の商号や本店が変わっている場合。

家を購入時、住宅ローンで融資を受け、その家に抵当権の設定登記をする。
そのローンを完済する。
そうすると、金融機関から、「抵当権抹消登記に関する書類」が、債務者宛てに送られてくる。
債務者は、それに基づき、抵当権抹消登記を行う。

抵当権抹消登記の依頼を受けるときは、その書類を持ってきてもらう。
金融機関から送られてきた書類と不動産の登記情報を取って確認すると、抵当権者である金融機関の商号や本店が、抵当権を設定したときと変わっている場合がある。
この変更の理由は、商号変更、本店移転とする(合併だと、違う話になる場合もあるので)。

抵当権抹消登記を申請するとき、抵当権者の商号や本店が変わっていたら、その変わったことを証する抵当権者の履歴事項証明書等を添付する。
また、そもそも、法人が登記申請人となるときは、法人の代表者事項証明書等を添付する。

しかし、法改正で、法人の場合は、登記申請時に「会社法人等番号」を提供すれば、原則として、法人の代表者事項証明書や履歴事項証明書等の添付を省略できるようになった。

つまり、抵当権抹消登記を申請するとき、会社法人等番号を提供すれば、抵当権者の商号や本店が変更していても、履歴事項証明書や代表者事項証明書は不要となったのである。

そうなってから、金融機関である抵当権者から送られてくる書類の中には、会社法人等番号が書かれた書類は入っているが、抵当権者の代表者事項証明書や履歴事項証明書はなくなった。

抵当権者としては、それでいいのだろう。
が、登記の委任を受けた司法書士としては、そうはいかない。
抵当権者の登記情報にアクセスして、本店や商号を確認する必要がある(ついでに、申請書に記載する代表取締役の名前も確認する)。

それと、細かい話。
抵当権抹消書類は、金融機関から債務者に送られる。
が、抵当権抹消登記の当事者は、抵当権設定者(抵当権が設定された不動産の所有者)と抵当権者である。
通常は、債務者=抵当権設定者であることが多いのでいいが、たまに、物上保証のときがある。
債務者が抵当権設定者でなければ、登記上は、債務者は関係ない。
こういう場合は、その物上保証人となった抵当権設定者から、抵当権抹消登記の委任を受けることとなる。

成年後見と遺産分割協議書(2)

相続登記において、成年後見人が、遺産分割協議書に署名押印(印鑑証明書添付)する場合。
成年後見人の押印と印鑑証明書は、家庭裁判所に届けた印鑑の押印とその家庭裁判所の発行する印鑑証明書でいいか、ということを先日書いた。

このことについて、某法務局に、質問をした。
私見は、「家庭裁判所に届けた印鑑の押印と、家庭裁判所の発行する印鑑証明書で可」というものである。

その法務局からは、「それでいい」ということだった。
というわけで、今後はそうしていこうと思う。

しかし、遺産分割協議書に不動産の他、例えば預貯金について記載されていた場合、預貯金等の相続手続でも家裁の印鑑証明書でいいかは、確認していないので不明である。

家裁の注意事項によると、この家裁の発行する印鑑証明書は、不動産登記用、東京法務局管内限定とのことなので、東京以外の法務局に登記申請するときは、事前に確認することとなる。

この家裁の印鑑証明書でいうところの不動産登記とは、売買による所有権移転登記等、つまり、登記義務者として印鑑証明書を添付する場合のものと、思っていた。
なので、相続登記、つまり、遺産分割協議書の印鑑証明書とは趣旨が違うのかなと思っていた。
しかし、遺産分割協議書の印鑑証明書について規定がなく、また、家庭裁判所という官公署が証明するのだから、問題はないのだろうと思っていた。

戸籍謄本を取る

立川駅周辺を歩いていたら、大学の卒業式だったんだなという服装の人をみかける。
多摩モノレール沿線には、いくつか大学があるから、その卒業生だろうか。
これから「追いコン」かな、と思ったり。
っつか、自分の頃が懐かしい。

学位授与式(卒業式)に出て。
自分のときは、卒業式の会場は日本武道館だった。
そこからキャンパスに戻って、大学から学位記をいただいて。
その後、所属サークルやゼミの追いコンに出て。
終わったら、解散。
それぞれの道へと…。

もう3月も終わり。

相続のとき、被相続人の出生からの戸籍を取って、相続人を特定していく。
戸籍謄本等の管轄は、本籍地のある自治体なので、そこ宛てに請求をする。
市町村合併等が繰り返されているので、本籍地が今はなき市町村町の場合、それが今はどこの市町村町になるか確認をする必要がある。
今はネットがあって、検索すれば分かるので、大変助かる。
以前は、市町村便覧みたいなのがあって、それを見て確認し、そして、念のため、その自治体に電話して、本籍地があっているかどうか確認していた。

現行の民法上、法定相続人は、次のとおり。
(1)子供・配偶者(代襲相続で、孫・ひ孫…)
(2)親・配偶者
(3)兄弟姉妹・配偶者(代襲相続は、その子供(甥・姪)まで)

被相続人の死亡年月日に注意。
被相続人の相続人や法定相続分は、死亡時に施行されている民法に基づくので。

被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本等を取得する。
それで、配偶者や、被相続人の子供(養子も)がいたら、それで相続人確定。
認知している子供もいる場合があるので、注意。
子供が先に死んでいたら、孫の戸籍謄本等を取る。

養子の場合、養子縁組日にも注意。
というのも、養子縁組前にその養子に子供がいた場合、養子が被相続人より先に死んでいても、その養子の子は代襲相続人ではないので。

被相続人に子供がいない場合、両親の戸籍を取っていく。
それで両親が生きていたら、相続人確定。
両親が死んでいたら、年齢にもよるが、祖父母まで遡る。

子供も両親もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹の戸籍謄本等を取っていく。
被相続人の兄弟姉妹とは、被相続人の父と母の子供ということなので、もし両親が結婚する前に他の人と結婚していて子供がいたら、その子供も相続人になる。|
なので、両親の出生からの戸籍謄本を取って、両親の子供を探していくこととなる。
兄弟姉妹が先に死んでいたら、その子供が代襲相続人になるので、そも子供の戸籍謄本等も取る。

戸籍謄本は、郵送で請求することが多い。
このとき、戸籍謄本等の手数料として、郵便局で定額小為替を買って、それも入れて送る。
郵送による戸籍謄本等の請求方法については、各自治体のWebサイトで確認できる。
本籍地がずっと同じなら一度の請求で済むが、転籍を繰り返していると、その都度、その自治体に請求しないとならない。

そんな感じで、戸籍謄本等を取っていく。






法定相続情報証明〜数次相続

成年後見人には「親族が望ましい」 最高裁、考え方示す
というニュースがあった。

自分も成年後見人等になっているが、自分の場合、被後見人等に親族がいても、高齢、疎遠、病気、遠方に居住等といった理由から親族が支援できないような事情があるようなときに、成年後見人になっている感じである(後見信託のための後見人は除く)。


被相続人Aさんの法定相続情報証明の手続きを行った。
それで、Aさんの相続手続を進めようとしていた。
そうしたら、相続人のうちのBさんが亡くなり、Bさんについても相続が発生した。
いわゆる数次相続であある。
このとき、被相続人Aさんの法定相続情報証明は、どうなるのだろうか。
B死亡として、再度、やり直す必要があるのだろうか。

数次相続の場合、法定相続情報証明は、被相続人ごととなる。
また、法定相続情報証明は、死亡時の相続人を表示するものとのことである。
そうすると、A死亡時にBは生存しているので、Aの法定相続情報証明にはB死亡の記載は入らない。
つまり、Aの法定相続情報証明や、このままでよく、やり直す必要はない。
そして、Bが死亡したので、新たにBの法定相続情報証明の手続きをする。

Aの法定相続情報証明書とBの法定相続情報証明書で、Aの相続手続を行うこととなる。