買戻特約(民法579条)(平成29年改正)
不動産の売主は、売買契約と当時にした買戻しの特約により、買主が支払った代金(別段の合意をした場合にあっては、その合意により定めた金額。第583条1項において同じ。)及び契約の費用を償還して、売買の解除をすることができる。この場合において、当事者が別段の意思を表示しなかったときは、不動産の果実と代金の利息とは相殺したものとみなす。
買戻しの期間は10年を超えることができず、期間を定めなかった場合は、5年以内に買戻しをしなければならない。(第580条)
売買契約と同時に買戻しの特約を登記したときは、買戻しは、第3者に対抗することができる。(第581条)
買戻特約は、住宅供給公社(東京だと東京都住宅供給公社)等が住宅を売買するときに付けられていたようで、その不動産の登記情報や登記事項証明書を見ると、買戻特約の登記もされている。
この買戻特約の登記を抹消するときは、登記権利者(所有者)と登記義務者(住宅供給公社等の買戻権者)の共同申請が原則である。
しかし、不動産登記法の改正により、令和5年4月1日から、売買契約の日から10年を経過している場合、登記権利者(所有者)が単独で抹消登記をすることができるようになった。
不動産登記法第69条の2(買戻しの特約に関する登記の抹消)
買戻しの特約に関する登記がされている場合において、契約の日から十年を経過したときは、第六十条の規定に関わらず、登記権利者は、単独で当該登記の抹消を申請することができる。
(第60条(共同申請) 権利に関する登記の申請は、法令に別段の定めがある場合を除き、登記権利者及び登記義務者が共同してしなければならない。)
買戻特約が登記されている場合の登記事項証明書は、こんな感じになっている。
権利部(甲区)
1番 所有権移転 原因○年○月○日売買
付記1号 買戻特約 原因○年○月○日特約
売買による所有権移転登記における売買の日付は、所有権移転の日となっている。
通常は、売買契約日=所有権移転日である。
しかし、売買契約において、特約で、買主が手付金を支払い、その後に残金を支払ったときに所有権が移転する、という内容になっているものもある(こちらの方が一般的か)。
この場合だと、売買契約を締結して、買主がまず手付金を支払い、その後に残金を支払って所有権移転となるので、登記される売買の日付は、残金を支払った日となる。
従って、売買契約日と所有権移転日は、必ずしも同じではないことがある。
一方、買戻特約は、売買契約と同時にされるのだから、登記されている特約の日が、売買契約の日であるだろう。
なので、契約の日から10年というのは、買戻特約の登記の原因の日付から判断することになると思われる。
なお、登記上、売買の日付と特約の日付が同じであれば、その日から10年経過しているかどうかを判断すればいい。
それで10年以上経過しているとなれば、登記権利者(所有者)から単独で、買戻特約の抹消登記が申請できることとなる。
この場合の登記申請は、登記原因証明情報は不要である(不動産登記令第7条第3項第1号)。
また、登記権利者が単独で申請できるので、登記義務者(買戻権者)に関する書類は不要となる。
しかし、例えば、買戻権者が東京都住宅供給公社であれば、申請書に、会社法人等番号や主たる事務所・名称等の情報が必要なので、その登記情報等は取っておく必要はあると思う。
登記権利者側に必要な書類は、司法書士に登記を依頼するならば、委任状となる。
但し、所有者の登記上の住所や氏名と現在の住所や氏名が違う場合は、その変更登記もすることとなる。
なお、登記権利者による単独抹消をした場合、登記完了の旨が、登記官から登記義務者に通知されるとのこと。
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