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登記原因証明情報

立川駅北口から、法務局とかIKEAとか、モノレールの下の通りとか、立川警察とか、自衛隊の基地とか、裁判所とか、市役所とかまでの、あの辺りの街の感じが結構好き。
広々としていて、ちょっと無機的で、すっきりした感じがして。
特に、冬の冷たい空気に触れると、そう感じる。
なんだろうと思って気付いたのは、電柱電線がないこと。
電線がないおかげで、視界を邪魔するものがなく、きれいで空が広々見えるのだ。
また、前に災害関係の本を読んだとき、地震で電柱が道に倒れて、救助に行く車両が通れなくなる、というようなことが書いてあった。
というわけで、是非、電柱電線の地中化を進めて欲しいなと思う。

不動産登記をオンライン申請(特例方式)する場合、書面で作成された登記原因証明情報をスキャンしてPDFにして、申請情報に添付して送信することとなっている。
というわけで、司法書士業務において。スキャナは必需品。
この場合、登記原因証明情報の内容において、登記原因や登記事項に関する部分について訂正等があった場合は却下されるが、登記原因や登記事項に関係ない部分であれば訂正等はかまわない、という扱いになっている。
ようは、登記原因証明情報をPDFにして送信した後に、登記原因証明情報の原本の一部を修正等することについて、登記原因や登記事項に関する箇所の修正等はできず却下となるが、登記原因や登記事項に関する箇所じゃなければ修正等してもいいよ、ってこと。

抵当権抹消登記なんかでは、金融機関から登記原因証明情報が交付される。
A4用紙1枚の解除証書だったり、抵当権設定契約書(抵当権の登記済証)に解除証書が貼り付けられていたり、報告書形式のものだったり。
報告書形式の登記原因証明情報とは、登記に必要な情報をまとめて作成されたもので、法務局に提出するためにだけ作成されたもの。
ようは、登記用。
なので、報告書形式の登記原因証明情報の場合、「○○法務局(○○支局、○○出張所)御中」と、提出先の法務局名を記載するようになっている。
なお、報告書形式の登記原因証明情報は、原本還付できない。

金融機関の作成した報告書形式の登記原因証明情報は、主要な箇所は記載されているが、例えば、不動産の表示や提出先の法務局名といった箇所は空欄になっている。
そういうときは、こちらで空欄に記載をしていくこととなる。

先日、そういった報告書形式の登記原因証明情報だったので、空欄部分を記載して、PDFにして、オンライン申請をした。
添付書類は送付にしたので、13号書面を作成して印刷し、送付の準備に入ったところで気付いた。
あ、登記原因証明情報の提出先の法務局名を空欄のまま送信してしまった…。

さて、どうするか。
加筆したら、却下になるのか?
それとも、提出先の法務局名は登記原因や登記事項に関することではないので、加筆しても問題ないのか?

これについて、私は、提出先の法務局名は、登記原因や登記事項に関することではないので、登記原因証明情報の原本に加筆して提出しても問題ないだろう、と思った。
ただ、念のため、管轄法務局に問合せたら、そこだったらいいとのことだったので、安心した。

メイヘン

登記名義人表示変更登記。
略して、名変(メイヘン)。
所有権や抵当権等の権利の登記名義人の住所や氏名、本店や商号等が変わったときに行う登記のこと。
以前は、住所が変更しても氏名が変更しても、それが例えば所有権登記名義人についての変更だったら、所有権登記名義人表示変更登記だったが、今は、住所が変わった場合は所有権登記名義人住所変更登記、氏名が変わった場合は所有権登記名義人氏名変更登記となった。
そうなったものの、呼び方としては、メイヘンと言っている。

被相続人(不動産の所有権登記名義人)が死亡したが相続人が不存在の場合、相続財産は法人化する(民951)。
この場合、登記上は、相続財産法人(亡○○相続財産)への所有権登記名義人表示変更登記をするとなっていたので、これについても、所有権登記名義人氏名変更登記となった。
○○という被相続人の氏名が、亡○○相続財産と変わったということで、氏名変更となる。
相続人不存在の場合、家庭裁判所において相続財産管理人が選任される。
被相続人の登記上の住所と相続財産管理人選任審判書上の住所(最後の住所)が違う場合は、住所も変更する必要があるので、所有権登記名義人住所氏名変更登記となる。

相続人不存在の場合の名変登記は、原因は年月日(死亡日)相続人不存在、申請人は相続財産管理人、登記原因証明情報は相続財産管理人の選任審判書となる。
この相続財産管理人選任審判書(謄本)は、登記原因証明情報と相続財産管理人の資格証明書を兼ねている。
なので、この選任審判書謄本は3ヶ月以内のものが必要か、ということになる。
この点については、実務上、3ヶ月以内のものでなくていいという扱いである。
なお、以前、某法務局にこの登記を申請したとき、3ヶ月以内の審判書謄本が必要と法務局から言われたことがあるが、言われたのは、これ1回のみ。

住所変更登記や氏名変更登記の登記原因証明情報は住民票や戸籍謄本等。
上記の、相続財産管理人選任審判書もそう。
不動産登記のオンライン申請は、登記原因証明情報をPDFにして送信する必要があるが、この名変登記をオンライン申請するときは、登記原因証明情報をPDFにして送信しなくてもいい。
が、私はやっちゃっている。

所有権や抵当権等の登記名義人の表示が変わった場合、その変更登記をする必要があるのだが、これには、原則と例外がある。
試験勉強でも勉強するし、実務でも多い。

簡単にまとめると、こうなる。
所有権に関する登記の場合は、名変必要。
所有権以外の登記の抹消登記の場合は、変更証明書を添付して、名変不要。
所有権の場合でも、仮登記の場合は、所有権以外の権利と同様。

名変登記をしなければならないのは、所有権に関する登記名義人の表示が変更した場合。
なので、例えば、売買による所有権移転登記で、売主の現住所と登記上の住所と違っている場合は、所有権移転登記の前に売主の住所変更登記を申請しなければならなくなる(通常はまとめて申請)。
但し、相続による所有権移転登記のとき、登記上の被相続人の表示と死亡時の表示が違う場合は、その変更を証する書面を添付すれば、名変登記は省略できる。
通常、こうする。

抵当権等といった所有権以外の権利の登記の抹消登記を申請するときは、抵当権者等その権利の登記名義人の表示の変更を証する書面を添付すれば、名変登記は省略できる。
例えば、住宅ローンが完済したので抵当権抹消登記をしようとする場合で、金融機関の登記上の本店と現在の本店が違うときは、その変更を証する書面(その金融機関の登記事項証明書)を添付すれば、抵当権者たる金融機関の本店変更の登記は省略できるということ。
よくある話。
(但し、金融機関の表示変更したといっても、例えば、合併で変わった場合は、抵当権移転登記をしなければならない場合もあるので、注意。)

所有権に関する登記でも、仮登記の場合は、所有権以外の権利の登記と同様となる。
なので、所有権移転登記仮登記を抹消する場合、仮登記名義人(登記義務者)の登記上の住所・氏名が現在のものと違っている場合は、その変更を証する書面を添付すれば、名変登記を省略できる。

平成27年11月2日から、会社や法人が登記を申請するときは、会社法人等番号を提供しなければならないこととなった。
会社法人等番号とは、会社や法人の登記簿(支店・重たる事務は除く)に記録される12桁の番号のこと。
会社法人等番号を提供することにより、会社等の資格証明書や本店や商号の変更を証する書面を添付する必要がなくなった。
だからであろう、例えば、抵当権抹消登記の場合、登記事項証明書や資格証明書を渡さなくなった金融機関もある。
そんなとき、金融機関から交付された書類の中に会社法人等番号が分かるものがあればいいが、それながければ、こちらで調べないといけない。
また、登記上の本店と現在の本店が本店移転して変わっている場合もある。
本店移転した登記事項証明書があればいいが、なければ、移転しているかどうかは、不動産の登記情報の抵当権者の本店と委任状や登記原因証明情報に記載されている本店を見る。

上に、相続人が不存在の場合、相続財産は法人化すると書いた。
この相続財産法人は、株式会社や医療法人のように登記して設立されるわけではないので、法人といっても、会社法人等番号はない。

同じ人なのに違う人?

11月も終わり。
ってもうかよ。

とある不動産の登記事項証明書には、共有者AB(持分各1/2)とあり、その共有者の苗字の漢字が、「」とあった。
Aが亡くなり、この不動産のA持分をBが相続することとなった。
戸籍を取ったら、戸籍上は、「高」ではなく、「」(いわゆる、ハシゴダカ)であった。
戸籍上の名前が「髙」だったので、相続登記は、そのとおり申請した。
すると、こういう連絡があった。

コンピューターの管理上、別人になってしまいます。

…は?

髙と高は、コンピューター上違う字となるため、髙で登記すると、最初のBと相続で取得したBは、違う人になってしまうとのこと。
髙で登記すると、このあとにもし所有権を処分した場合、所有権移転登記にならなくなるとのこと。

どういうことかというと、同じ人だったら、B単独所有となるので、そのあとに売買をしたら、所有権移転登記となる。
しかし、別人ということになれば、二人の共有ということになってしまうので、「高」持分全部移転と、「髙」持分全部移転となってしまうということ。

で、どうするかということだった。

髙と高が違う字になるとは知らなかった。
高=髙で、髙は外字だと思っていたが、どうやら違うらしい。
髙は、異体字というとのこと。
異体字とは、標準の自体と同じ意味・発音をもつが、標記に差異がある文字のこと。

そんなわけで、不動産の登記上(コンピュター上?)、同じ人でも違う人になることもある、ということでした。

オンライン申請(半ライン申請)・不動産登記の場合

不動産登記の半ライン申請の流れは、こんな感じ。
半ライン申請とは、申請情報と登記原因証明情報はオンラインで送信し、添付書類は法務局に持参あるいは郵送して申請する方法のこと。

私は、司法書士用の専用ソフトを使っていて、申請用総合ソフトは使っていません。
が、おそらく、そんなに変わらないと思います。

(1)Win機を起動し、ソフトを起動する

(2)登記原因証明情報をPDF化する
書面をスキャナでPDF化する。
あるいは、相続関係説明図だと、印刷してスキャンでPDF化するか、作成データをそのままPDF化する。
この登記の件で作成された事件フォルダに、PDFにした登記原因証明情報を保存する。

(3)ソフトに必要事項を入力し、申請データを作成する
申請データは、ソフトにおけるオンライン申請データ管理画面に表示される。

(4)申請データに、(2)の登記原因証明情報PDFを添付する

(5)申請データを紙に印刷して、内容を確認
念のため、紙に印刷して、チェックしている。
チェックして問題なければ、申請へ。

(6)申請データに電子署名をする
ソフトの場合、電子署名はソフトに登録しているため、電子署名のアイコンをクリックすればよく、カードリーダーを繋げてカードを入れて…というようなことはしない。
複数の申請がある場合、その申請データを全部選択して電子署名すれば、全件電子署名される。
ようは、1件ごとにしなくていいということ。

(7)申請
送信をクリック。
念のため、連件申請の場合は、連件になっているか確認をしておく。

(8)法務省オンライン申請システムから、次のメールが届く
○申請情報がシステムに到達したというお知らせ
○電子納付に必要な情報が発行されたというお知らせ
管理画面で、これらを確認する。

(9)(8)のメールからしばらくしたら、次のメールが届く
○受付番号が発行された旨のお知らせ
管理画面で確認する。

(10)登録免許税を電子納付する
登録免許税の納付の画面で、電子納付をクリックすると、金融機関の一覧が掲載されたサイトが開くので、そこから、納付する金融機関を選択する。
そうすると、その金融機関のサイトが開くので、ログインして、電子納付をする。
納付後、私は、納付した画面を印刷している。
後の帳簿付けのために。
なお、登録免許税を電子納付せず、収入印紙で納付する場合は、この作業は不要。
但し、収入印紙を貼付するための用紙を作成し、印刷する。

(11)13号書面を作成し、印刷する
添付書類を法務局に提出するときに使う書類(私は13号書面と勝手に言っている)を作成し、印刷する。
そして、その書面と添付書類を綴じて、押印をする。
法務局にて登記識別情報を受領する場合は、ここで押印した印鑑が必要になる。

(12)(11)の添付書類を、法務局に持参あるいは郵送する。
郵送の場合、私は書留郵便にしている。
登録免許税を収入印紙で納付する場合は、収入印紙を購入して、用紙に貼付して、添付書類と一緒に法務局に持参・郵送する。
ーー申請はここまでーー

ーー申請後ーー
(13)添付書類を法務局に送付した場合、法務省オンライン申請システムから、添付書類が届いたというメールが届く
正確に言うと、法務省オンライン申請システムから、「お知らせがあるので確認してくれ」というメールがくるので、ソフトを起動して、通知を確認すると、添付情報が届いたということが記載されている。

ーー補正があれば連絡あるので補正ーー
(14)オンライン申請した場合の補正は、オンラインでする

ーー登記完了ーー
(15)登記が完了すると、法務省オンライン申請システムから、「手続終了となった」旨のメールが来る
ソフトを起動して、確認をする。

(16)登記事項証明書を申請する
これもオンラインで申請をする。
私は、だいたい、登記事項証明書は、一番近い立川法務局にオンラインで申請し、立川法務局に取りに行くようにしている。
これが登記事項証明書の手数料が一番安い。
但し、下記(17)。

(17)登記識別情報等の受領
申請時、登記完了後の登記識別情報や登記完了証を法務局で受取るとした場合は、法務局に行ってこれを受取る。
この場合、上記(16)の証明書はこの法務局に申請しておき、一緒に受取るのが通常。
登記識別情報等を事務所に郵送にした場合は、法務局から郵送されてくるので、これを受取る。
私は、だいたい、立川法務局のみ持参・受け取りに行き、それ以外の法務局は郵送にしている。
また、返信も、書留にしている。


(18)登記完了後の書類等を依頼者に引き渡して終了

判決による登記

台風。
朝から風雨がだんだん強くなり。夕方の今は、静かになっている。
立川市に、土砂災害警戒情報が発令された。
そのため、立川市の一部地域に対し、避難準備情報が出された。

先に、離婚による財産分与のことを書いた。
その離婚は、協議の他、調停でも行われることがある。
調停により離婚が成立した場合、調停条項に、夫が不動産を妻に分与し、所有権移転登記をするするといったことがきちんと記載されていれば、この調停調書に基づいて、妻が単独で所有権移転登記ができる。

不動産登記法第63条1項

第60条(中略)の規定にかかわらず、これらの規定による申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続きをすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。

ここにいう確定判決とは、確定判決の他、確定判決と同じ効力を有する和解調書や調停調書等も含まれる。
そして、この規定により、確定判決や調停調書等に基づいてする登記を、判決による登記、と言っている。


不動産登記は共同申請が原則である。
夫が妻に不動産を財産分与する場合は、夫(登記義務者)と妻(登記権利者)が共同して所有権移転登記を申請する。
この場合、夫は、登記済証・登記識別情報と印鑑証明書が必要になる。
しかし、判決による登記の場合、妻が単独で所有権移転登記を申請できることとなる。
この場合、夫の登記済証・登記識別情報や印鑑証明書は不要となる。
というのも、判決等によって、登記義務者の登記申請意思が擬制されているので。

なお、この場合でも、登記原因証明情報(判決正本と確定証明書、調停調書)、妻の住民票は必要である。

この判決による登記に注意点がある。
それは、判決の主文や調停条項等に、登記の内容、登記原因とその日付、当事者、登記事項、不動産等、登記に必要な事項がきちんを記載されている必要があり、かつ、一方当事者に対して登記手続きをするよう命じていなければならない、ということである。
この点をきちんとしておかないと、いざ登記を申請しても、登記ができなかった、なんてことにもなりかねない。

例えば、売買で、買主が売主を訴えたとすると、こんな感じの判決主文になります。
被告は原告に対して、別紙不動産目録記載の不動産について、平成○年○月○日売買を原因とする所有権移転登記手続きをせよ。

例えば、調停離婚であれば、こんな感じの調停条項になります。
申立人(夫)は相手方(妻)に対し、別紙不動産目録記載の不動産について、本日(*)付財産分与を原因とする所有権移転続きをする。

(*)調停成立日

夫が妻に不動産を財産分与する場合。
夫の今の住所が登記上の住所と変わっていた場合、財産分与による所有権移転登記の前提として夫の住所変更登記が必要になる。
調停調書に両住所が併記されていても、これを省略できない。
そして、この夫の住所変更登記は、夫が単独で申請する登記である。
夫が住所変更登記に協力してくれればいいが、そうでなければ、妻が夫に代わって(債権者代位で)、夫の住所変更登記を申請することができる。
この場合、夫の住民票等(登記上の住所と現住所のつながりをつける)が必要になりる。
登記を司法書士に委任すれば、この住民票は司法書士が職務上請求で取得する。
一方、妻ご自身で登記される場合は、妻は利害関係人に該当するでしょうから、役所に調停調書等を提出して説明すれば取得できるものと思われる(この経験がないので分かりません)。

財産分与と登記

夫婦が離婚したとき、財産分与をする。
その財産が不動産のとき、財産分与を原因とする所有権移転登記を行う。
例えば、夫の不動産を妻に財産分与した場合は、夫から妻にその不動産の所有権が移転したので、夫から妻への財産分与を原因とした所有権移転登記をすることとなる。
財産分与の原因日付は、離婚後財産分与協議が成立した日になる。ただし、財産分与は離婚によって可能となるので、協議離婚の届出前に財産分与協議が成立した場合は、協議離婚の届出日となる。
調停の場合は調停成立日。

なお、そういうことから、不動産の登記事項証明書の甲区に、財産分与によって所有権が移転している記載があれば、その所有者と前所有者は元夫婦で離婚した、ということが分かってしまう。

次の例の場合を考えてみる。
不動産の所有者は夫で、これを100%妻に財産分与をし、妻が住み続ける。
不動産には住宅ローンの抵当権の設定登記がある。債務者は夫。住宅ローンは残っていてまだ返済中。住宅ローンは夫が支払い続ける。

この場合の財産分与協議を
(1)夫は妻に不動産を財産分与する
というようにする場合と
(2)夫は妻に、抵当権消滅を条件に不動産を財産分与する
というようにする場合に分けてみる。
この違いは、所有権の移転時期である。(1)は財産分与協議時が所有権移転日だが、(2)は抵当権が消滅した日が所有権移転日である。

(1)の場合
この場合、担保付きの不動産を取得することとなる。
また、この場合、財産分与による所有権移転登記は、実質不可能。
というのも、住宅ローンの契約においては、通常、第三者への所有権移転はしないようにという譲渡禁止特約があるので。
譲渡禁止なのだから、そもそもこの不動産を財産分与できないのではないかという疑問が生じるが、財産分与を受けた者は、所有権の取得を債権者に対抗はできないものの、財産分与は当事者間では有効なので、財産分与の目的物とできるといえる。

このような譲渡禁止特約に違反して所有権移転登記をした場合、期限の利益を喪失して、残債一括返還請求をされる可能性もある。
なので、住宅ローン会社と相談して登記できるようならいいが、そうでなければ、そういう危険を犯してまで登記をするか、ということになる。
そういわれれば、普通はしないだろう。


それでは、妻の権利が保全されないので、妻の権利を保全するために仮登記(不動産登記法105条)をするということも考えられる。
この場合の仮登記は1号仮登記をすることとなる。
1号仮登記とは、不動産登記法105条1号の仮登記のことで、既に所有権が移転しているが、登記に必要な登記済証・登記識別情報などが添付できないときにする仮登記のことをいう。
また、同条2号の仮登記、2号仮登記もあるが、これは、物権変動は生じていないが、将来において物権変動を生じさせる請求権(始期付きまたは停止条件付のものその他将来確定することが見込まれるものを含む)を保全するときにする仮登記のことをいう。
また、物権変動そのものが始期付または停止条件付のときにも2号仮登記はできると解されている。

しかし、この場合にする1号仮登記は、本登記できるけど登記済証・登記識別情報が添付できないので順位保全のためにしておく、というものなので、仮登記にこだわる必要もない。
仮登記も夫と妻の共同申請が原則だし、夫も登記に協力しなければならないのだから、本登記をするようにすればいいと思う。
また、調停離婚による調停調書に基づいて所有権移転登記をする場合、義務者の登記済証・登記識別情報は不要なので、仮登記ではなく普通に本登記をすればいい。
それに、1号仮登記をする場合であっても、既に所有権は移転しているので、上記の住宅ローンの問題は同じように起こる。

なので、この場合、住宅ローン会社が登記に応じる等といった事情がない限り、住宅ローンが完済されるまで財産分与による所有権移転登記ができないことになる。
それでもいいならともかく、これでは、妻の権利が保全できない。

そのような危険を回避するには、財産分与の効力は発生させつつ、不動産の所有権移転時期を住宅ローン完済時(抵当権消滅時)とすればいいのではないかと思える。
これが、上記(2)である。

(2)の場合
この場合、所有権は移転していないので、上記のような住宅ローンの問題(譲渡禁止特約違反)は起こらない。しかし、所有権移転登記も1号仮登記もできないので、妻の権利が保全されない。
そこで、抵当権消滅を停止条件とした所有権移転仮登記(2号仮登記)をすることが考えられる。
しかし、この場合は、2号仮登記しかできないし、それに、これををしたとしても、住宅ローンを完済する等して抵当権が消滅するまで所有権は移転されないというそもそもの問題はある。

説例のような場合、(1)が本来だけど、(2)のようにするのが現実的かなと思うが、どうだろうか。
ちょっと悩ましい。