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判決による登記
台風。
朝から風雨がだんだん強くなり。夕方の今は、静かになっている。
立川市に、土砂災害警戒情報が発令された。
そのため、立川市の一部地域に対し、避難準備情報が出された。
先に、離婚による財産分与のことを書いた。
その離婚は、協議の他、調停でも行われることがある。
調停により離婚が成立した場合、調停条項に、夫が不動産を妻に分与し、所有権移転登記をするするといったことがきちんと記載されていれば、この調停調書に基づいて、妻が単独で所有権移転登記ができる。
不動産登記法第63条1項
第60条(中略)の規定にかかわらず、これらの規定による申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続きをすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
ここにいう確定判決とは、確定判決の他、確定判決と同じ効力を有する和解調書や調停調書等も含まれる。
そして、この規定により、確定判決や調停調書等に基づいてする登記を、判決による登記、と言っている。
不動産登記は共同申請が原則である。
夫が妻に不動産を財産分与する場合は、夫(登記義務者)と妻(登記権利者)が共同して所有権移転登記を申請する。
この場合、夫は、登記済証・登記識別情報と印鑑証明書が必要になる。
しかし、判決による登記の場合、妻が単独で所有権移転登記を申請できることとなる。
この場合、夫の登記済証・登記識別情報や印鑑証明書は不要となる。
というのも、判決等によって、登記義務者の登記申請意思が擬制されているので。
なお、この場合でも、登記原因証明情報(判決正本と確定証明書、調停調書)、妻の住民票は必要である。
この判決による登記に注意点がある。
それは、判決の主文や調停条項等に、登記の内容、登記原因とその日付、当事者、登記事項、不動産等、登記に必要な事項がきちんを記載されている必要があり、かつ、一方当事者に対して登記手続きをするよう命じていなければならない、ということである。
この点をきちんとしておかないと、いざ登記を申請しても、登記ができなかった、なんてことにもなりかねない。
例えば、売買で、買主が売主を訴えたとすると、こんな感じの判決主文になります。
被告は原告に対して、別紙不動産目録記載の不動産について、平成○年○月○日売買を原因とする所有権移転登記手続きをせよ。
例えば、調停離婚であれば、こんな感じの調停条項になります。
申立人(夫)は相手方(妻)に対し、別紙不動産目録記載の不動産について、本日(*)付財産分与を原因とする所有権移転続きをする。
(*)調停成立日
夫が妻に不動産を財産分与する場合。
夫の今の住所が登記上の住所と変わっていた場合、財産分与による所有権移転登記の前提として夫の住所変更登記が必要になる。
調停調書に両住所が併記されていても、これを省略できない。
そして、この夫の住所変更登記は、夫が単独で申請する登記である。
夫が住所変更登記に協力してくれればいいが、そうでなければ、妻が夫に代わって(債権者代位で)、夫の住所変更登記を申請することができる。
この場合、夫の住民票等(登記上の住所と現住所のつながりをつける)が必要になりる。
登記を司法書士に委任すれば、この住民票は司法書士が職務上請求で取得する。
一方、妻ご自身で登記される場合は、妻は利害関係人に該当するでしょうから、役所に調停調書等を提出して説明すれば取得できるものと思われる(この経験がないので分かりません)。
財産分与と登記
夫婦が離婚したとき、財産分与をする。
その財産が不動産のとき、財産分与を原因とする所有権移転登記を行う。
例えば、夫の不動産を妻に財産分与した場合は、夫から妻にその不動産の所有権が移転したので、夫から妻への財産分与を原因とした所有権移転登記をすることとなる。
財産分与の原因日付は、離婚後財産分与協議が成立した日になる。ただし、財産分与は離婚によって可能となるので、協議離婚の届出前に財産分与協議が成立した場合は、協議離婚の届出日となる。
調停の場合は調停成立日。
なお、そういうことから、不動産の登記事項証明書の甲区に、財産分与によって所有権が移転している記載があれば、その所有者と前所有者は元夫婦で離婚した、ということが分かってしまう。
次の例の場合を考えてみる。
不動産の所有者は夫で、これを100%妻に財産分与をし、妻が住み続ける。
不動産には住宅ローンの抵当権の設定登記がある。債務者は夫。住宅ローンは残っていてまだ返済中。住宅ローンは夫が支払い続ける。
この場合の財産分与協議を
(1)夫は妻に不動産を財産分与する
というようにする場合と
(2)夫は妻に、抵当権消滅を条件に不動産を財産分与する
というようにする場合に分けてみる。
この違いは、所有権の移転時期である。(1)は財産分与協議時が所有権移転日だが、(2)は抵当権が消滅した日が所有権移転日である。
(1)の場合
この場合、担保付きの不動産を取得することとなる。
また、この場合、財産分与による所有権移転登記は、実質不可能。
というのも、住宅ローンの契約においては、通常、第三者への所有権移転はしないようにという譲渡禁止特約があるので。
譲渡禁止なのだから、そもそもこの不動産を財産分与できないのではないかという疑問が生じるが、財産分与を受けた者は、所有権の取得を債権者に対抗はできないものの、財産分与は当事者間では有効なので、財産分与の目的物とできるといえる。
このような譲渡禁止特約に違反して所有権移転登記をした場合、期限の利益を喪失して、残債一括返還請求をされる可能性もある。
なので、住宅ローン会社と相談して登記できるようならいいが、そうでなければ、そういう危険を犯してまで登記をするか、ということになる。
そういわれれば、普通はしないだろう。
それでは、妻の権利が保全されないので、妻の権利を保全するために仮登記(不動産登記法105条)をするということも考えられる。
この場合の仮登記は1号仮登記をすることとなる。
1号仮登記とは、不動産登記法105条1号の仮登記のことで、既に所有権が移転しているが、登記に必要な登記済証・登記識別情報などが添付できないときにする仮登記のことをいう。
また、同条2号の仮登記、2号仮登記もあるが、これは、物権変動は生じていないが、将来において物権変動を生じさせる請求権(始期付きまたは停止条件付のものその他将来確定することが見込まれるものを含む)を保全するときにする仮登記のことをいう。
また、物権変動そのものが始期付または停止条件付のときにも2号仮登記はできると解されている。
しかし、この場合にする1号仮登記は、本登記できるけど登記済証・登記識別情報が添付できないので順位保全のためにしておく、というものなので、仮登記にこだわる必要もない。
仮登記も夫と妻の共同申請が原則だし、夫も登記に協力しなければならないのだから、本登記をするようにすればいいと思う。
また、調停離婚による調停調書に基づいて所有権移転登記をする場合、義務者の登記済証・登記識別情報は不要なので、仮登記ではなく普通に本登記をすればいい。
それに、1号仮登記をする場合であっても、既に所有権は移転しているので、上記の住宅ローンの問題は同じように起こる。
なので、この場合、住宅ローン会社が登記に応じる等といった事情がない限り、住宅ローンが完済されるまで財産分与による所有権移転登記ができないことになる。
それでもいいならともかく、これでは、妻の権利が保全できない。
そのような危険を回避するには、財産分与の効力は発生させつつ、不動産の所有権移転時期を住宅ローン完済時(抵当権消滅時)とすればいいのではないかと思える。
これが、上記(2)である。
(2)の場合
この場合、所有権は移転していないので、上記のような住宅ローンの問題(譲渡禁止特約違反)は起こらない。しかし、所有権移転登記も1号仮登記もできないので、妻の権利が保全されない。
そこで、抵当権消滅を停止条件とした所有権移転仮登記(2号仮登記)をすることが考えられる。
しかし、この場合は、2号仮登記しかできないし、それに、これををしたとしても、住宅ローンを完済する等して抵当権が消滅するまで所有権は移転されないというそもそもの問題はある。
説例のような場合、(1)が本来だけど、(2)のようにするのが現実的かなと思うが、どうだろうか。
ちょっと悩ましい。
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