専門職が成年後見人等になっている場合、後見等登記上、住所が事務所になっている場合がある。
成年後見業務において、成年後見人等の印鑑証明書が必要なときがある。
印鑑証明書とは、住所地の市区町村長が作成するものである。
一方、司法書士になると職印を各司法書士会に登録する。また、それについては、職印証明書が発行される。
そうすると、成年後見業務において印鑑証明書が要求される場合、それは市区町村長作成の印鑑証明書なのか、あるいは、職印証明書なのか、ということになる。
というのも、住所と事務所が違っていれば、後見等登記上の住所と市区町村長作成の印鑑証明書上の住所が違うことになるからである。この場合、印鑑証明書を提出したら、住所が違うので、本当に同じ人物?となってしまう。一方、職印証明書ならこれは一致するが、職印証明書を印鑑証明書と同じように扱っていいのか、ということになるからである。
なお、成年後見人等の登記が個人の住所でされていたり、事務所と自宅が同じであれば、特に問題はない。その住所地の市区町村長作成の印鑑証明書でいいのだから。
では、印鑑証明書と職印証明書のどちらになるのだろうか。
成年後見人等として登記されているのが事務所なら職印証明書になる、と考えるのが一般的だと思うが、そうもいかない場合もある。
売買による所有権移転登記において必要な登記義務者(個人)の印鑑証明書は、市区町村長が作成するものに限るとされ(不動産登記令16条1項)、作成後3ヶ月以内のものでなければならないとされている(同2項)。
つまり、この場合は、成年後見人等の事務所が登記されていても、必要なのは、成年後見人等の住所地の市区町村長作成の印鑑証明書である。
となると、住所と事務所が違えば、後見登記上の住所と印鑑証明書上の住所が違うので、事務所と住所は違うけど同一人物だということを証明する必要が生じる。
司法書士会では、登録事項証明書というものを発行している。これには、氏名、職名、登録番号、所属司法書士会等が記載されているが、希望すれば、事務所や住所の記載も可能である。
というわけで、こういう場合は、司法書士会に、事務所と住所の記載された登録事項証明書を請求し、その交付を受けるておく必要がある。
(登録事項証明書は、所属司法書士会経由で日司連に請求。1通2,000円する、結構高い。)
また、相続登記において、遺産分割協議を行い遺産分割協議書に印鑑証明書を添付する場合もある。この場合も、成年被後見人等が不動産を相続するかしないかによって分けてみる。
登記実務上、不動産を取得して申請人となる者以外の印鑑証明書が必要となっている(先例)ので、遺産分割協議で成年被後見人等が不動産を相続することになった場合、成年後見人の印鑑証明書は必要ではないことになる(印鑑証明書が不要ならば、押印も実印でなくていい)。
なので、印鑑証明書でも職印証明書でもどちらでもいいといえる(これは不動産登記に限ってのこと)。
一方、成年被後見人が不動産を相続しない遺産分割協議の場合は、成年後見人の印鑑証明書が必要になってくる。
この場合の印鑑証明書については、上記の不動産登記令16条のような市区町村長作成の印鑑証明書に限る、という規定がないので、職印証明書で足りる、と個人的には考えている。
この点については未経験なので、実際のところはどうなのか不明である。
但し、遺産分割協議の真正を担保するという意味からすれば、全員の実印押印・印鑑証明書が望ましいとも思える。
金融機関に成年後見届をする場合にも、成年後見人の印鑑証明書が必要となってくるが、この場合、印鑑証明書が必要か、職印証明書でいいかは、各金融機関によって取扱いに違いがあるようである。
結局のところ、職印証明書でいいのか、印鑑証明書が必要なのかは、提出先に確認するしかないのかなと思う。
専門職が成年後見監督人等の監督人に選任されている場合に印鑑証明書が必要なときもあるが、この場合も、同様である。
また、この記事は、司法書士を前提に書いたが、弁護士が成年後見人等になって事務所で登記されている場合も同様である。
成年後見人等用の印鑑証明書、という制度ができればいいのにと思ふ。
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