株式会社の取締役や監査役(いる場合)には任期があり、任期がきたら、新たに役員を選任し(同じ役員を選任してもかまわない)、選任をしたら、変更後2週間以内に、役員変更登記をしなければならない。
従って、株式会社は、その他の登記事項に変更がなければ、最低でも、役員の任期ごとに登記をしなければならなくなる。
が、その登記を忘れてしまうこともある。
登記を忘れたり怠ったりすることを、登記懈怠なんて言ったりするが、役員変更の場合、二つの意味を持つのかなと思う。
一つは、役員を選任したが、登記を忘れた場合。(文字通りの登記懈怠、狭義の登記懈怠)
もう一つは、役員の選任を忘れた場合。(選任懈怠、広義の登記懈怠)
選任懈怠なのだから登記懈怠にもなるので、選任懈怠=登記懈怠とも言える。
そんな、忘れてしまった場合にする、株式会社の役員変更登記。(一例)
コロナで総会が開催できなかった、という状況は除く。
株式会社の場合、取締役会を置く・置いていない、監査役はいる・いないとあるので、ここでは、取締役会は置いていない・監査役はいない、という場合にする。
また、定款に、任期として「選任後○年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」という規定があるものとする。
登記事項証明書(登記情報)をとり、定款で任期がどうなっているかを確認する。
登記事項証明書等の役員の就任(重任)日と任期を見て、任期中か任期が経過しているかを確認する。
任期が経過していれば、いつ任期満了となったかを確認し、その任期満了となる年に定時総会をしたか、その定時総会で役員を選任したかを確認する。
任期満了の年に定時総会を開催し、役員を選任したが、登記だけ忘れているのならば、そのときの議事録等で登記をする。(登記懈怠)
このとき、同じ役員が選任されていれば、「重任」となる。
任期満了の年に定時総会を開催したが、役員の選任をしなかった場合、新たに定時総会(翌年以降)や臨時総会を開催して、役員を選任する必要がある。(選任懈怠)
このとき、同じ役員を選任しても、「年月日(任期満了日)退任、年月日(役員として選任され就任承諾をした日)就任」となる。
定時総会を開催していなかった場合も、定時総会や臨時総会を開催して、役員を選任する必要がある。(選任懈怠)
このとき、同じ役員を選任しても、「年月日(任期満了の年の定時総会を開催すべき期間の満了日(例えば、決算期が毎年3月で、それから3ヶ月以内に定時総会をしなければならない場合、期間満了日は6月30日))退任、年月日(役員として選任され就任承諾をした日)就任」となる。
取締役が代表取締役になっている場合は、その代表取締役も同様となる。
登記懈怠と選任懈怠では、変更前の役員が再度役員になる場合、「重任」となるか、「退任して就任」となるかの違いがある。
登記懈怠(狭義)の場合、「重任」となるが、選任懈怠の場合、登記上、その役員の退任日と就任日にずれが生じ、任期がつながっていないようにみえるが、その間は、権利義務で繋いでいることになる。
そうやって役員変更登記を申請すると、法務局で、登記懈怠であることが判明することになるので、裁判所から過料の通知が来るかもしれない。
また、以下のようなことで、登記懈怠が判明する場合もある。
(参照 法務省 令和2年度の休眠会社等の整理作業(みなし解散)について)
株式会社の場合、12年以上登記がされていないと、みなし解散となることから、法務大臣の公告を行い、法務局からその会社に対して通知書が発送される。
その通知書を受け取った会社は、事業を廃止していなければ、事業を廃止していない旨の届出を管轄法務局に提出する必要がある。
その届出がなされなければ、解散の登記をする等、整理作業を行う。
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