オンライン申請と書面申請
登記(不動産登記と商業・法人登記について)申請の方法は2つある。
1つは書面申請で、もう1つはオンライン申請。
書面申請とは、申請書を書面で作って法務局に申請する方法。
紙申請ともいう。
オンライン申請とは、インターネットを通じて申請情報を法務局に送信する方法。
書面申請は、法務局に持参する方法(従来はこれだった)と郵送する方法があるので、正確に言えば、申請方法は三つともいえる。
不動産登記のオンライン申請については、添付書類も全て電子化する必要があるので、実質的に、不動産登記のオンライン申請は不可能だった。
そこで、平成20年1月15日から、申請情報と登記原因証明情報をPDFにしてこれを送信し、添付書類は、申請の受付の日から二日以内に提出(持参あるいは郵送)する、という扱いになった。
これを特例方式という。
また、半ライン申請ともいう(半分オンラインという意味)。
商業・法人登記については、最初から、特例方式だった。
私は、基本的に、オンライン申請を利用している。
が、オンライン申請の方が書面申請より手間かな…と思うときがある。
そうなると、オンライン申請を利用するメリットがなければ、書面申請でもいいかなということにもなる。
そこで、私が感じるオンライン申請のメリット・デメリットを書いてみる。
あくまでも個人的見解。
なお、以前は、オンライン申請をすると登録免許税が安くなるというメリットがあったが、今はこれはないので、これは省く。
メリット
(1)法務局に行かなくてすむ
これが一番のメリットだと思う。
郵送申請でも法務局に行かなくてもすむが、この場合、受付日が変わってくる。(後述)
また、もし補正があった場合は、不動産登記の場合は、オンライン申請の時はオンラインで補正だが、書面申請の時は窓口で補正となる。
なので、遠方の場合であれば、オンライン申請の方がいいと思う。
一方、商業・法人登記をオンライン申請した場合の補正は、オンラインでも書面でも可とのこと。
郵送申請の場合、郵便事故で申請書が配達されないという可能性もなくはない。
しかし、オンライン申請で添付書類を郵送する場合、既に申請済みかそうでないかの違いがあるが、郵便事故という点では、これは同じことか…。
それに、オンラインでも、システム障害の可能性もなくはない。
(2)当日午後5時15分までの送信なら、受付日はその日
登記の受付日は、書面申請で法務局持参だとその日、郵送申請だと申請書が法務局に届いて受付された日となる。
一方、オンライン申請だと、当日の午後5時15分までに申請すれば、その日の受付となる。
なお、オンライン申請のシステム稼働時間は午後9時までなので、午後5時15分以降にオンライン申請したら、翌日の受付となる。
だが、受付日にこだわるような登記がなければ、気にしなくてもいいか。
(3)登録免許税の電子納付が可能
収入印紙を郵便局に行って買う必要がない。
だが、どのみち添付書類を郵送するために郵便局に行くのだったら、そのとき収入印紙を買えばいいので、さしてメリットではないか…。
ただ、郵便局の窓口が空いている時間帯に行かないといけない。
なお、郵便局の本局だと夜間窓口があるが、確か、高額の収入印紙は買えなかった記憶がある。
(4)メールアドレスを登録しておけば、登記完了等の連絡がメールで来る
これは地味に便利
登記完了のメールが来た、じゃあ登記事項証明書を申請しようってな感じ。
(5)オンライン申請の方が、書面申請の時よりも、登記完了が早い(ような気がする)
気がするじゃなくて、たぶんそうですきっと。
デメリット
(1)システム障害
ただこれは、交通事故、郵便事故と同じことなので、デメリットともいえないか。
(2)書面申請への慣れとオンラインの不慣れ
案外、これもあるのかもしれない。
(3)不動産登記のオンライン申請の場合、登記原因証明情報については登記原因または登記事項に関する箇所については補正不可で、登記申請の取下げとなる
不動産登記のオンライン申請を阻む最大要因はこれだと思う。
これは、こうなっている。
「申請情報と併せて提供されたPDFファイルに記録された登記原因証明情報の内容について字句の訂正がある場合でも、訂正箇所が登記原因または登記事項に関係のない部分にすぎない場合には、当該PDFファイルにつき、適法なPDFファイルの提供があったものとして事務処理を行うこととする。
登記原因又は登記事項に関する部分に訂正または記載の遺漏があったものと認められる場合は、取下げの機会を与えたうえ、却下する。」
また、文字化け等で法務局がPDFを開けなかった場合、PDFの再送を認めるが、これは一度のみ。
不動産登記のオンライン申請の時は、一部の登記を除き、登記原因証明情報(書面)をPDFにして、登記申請情報に添付しなければならない。
これは、架空の登記申請を防止するというためである。
なので、このようなおそれがなければ補正を認める、ということのようだ。
なお、こうなる以前は、登記原因証明情報のPDFと提出された登記原因証明情報とが相違していた場合、申請は却下される扱いであったが、これが多少緩和されて上記のようになった。
つまり、オンライン申請で提供したPDFの登記原因証明情報と後から提出された書面の登記原因証明情報(原本)の内容において、登記に関する記載が違っていた場合は修正できず、この登記申請は取下げなければならないということである。
私は、この経験がないので分からないが、たぶん、例えば、登記原因証明情報が平成28年11月16日売買となっていたのでそういう登記原因証明情報を添付してオンライン申請した後に、実は平成28年11月17日売買だったので、登記原因証明情報の売買日付を訂正して提出した、というような場合のことだろう。
書面申請の場合、このような扱いはない。
というわけで、不動産登記のオンライン申請は、書面申請に比べれば、リスクが高くなる。
専門家なんだから間違わなければいいじゃん、と言われればそれまでだが、そうしているつもりであっても、絶対ミスをしないとも言い切れないし、万が一というときもある。
なので、不動産登記のオンライン申請でこのデメリットがある以上、不動産登記のオンライン申請に抵抗を抱くのもやむを得ないと思う。
なお、上にも書いたが、私自身は、申請件数が少ないこともあって、いまのところ、登記原因証明情報が原因による取下げの経験はない。
一方、商業・法人登記については、不動産登記の場合の登記原因証明情報のようなデメリットはないため、オンライン申請に対する抵抗はなく、やりやすいと思う。
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