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相続放棄と代襲相続
登記済証や印鑑証明書の偽造があったとのこと。
相続放棄(家庭裁判所で手続を行う)をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす(民939)。
つまり、相続人ではなくなる、ということになる。
代襲相続(民887条2項)というものがある。
これは例えば、父親が死んで相続が発生したときに、その子供が既に死んでいた場合、その子供に子供(つまり孫)がいれば、その孫が相続人となる、というもの。
それでは、上の例で、子供が死んだのではなく相続放棄をした場合、孫は代襲相続をするのか、ということがあるが、これはしない。
相続放棄は、代襲相続の原因とならない。
また、代襲相続の規定(民887条2項但書き)で、「被相続人の直系卑属でない者はこの限りでない」とある。
つまり、被相続人の直系卑属でない者は代襲相続人になはらないということである。
この被相続人の直系卑属でない者というのは、縁組前の養子の子、である。
これはこの辺りを勉強すると習うことであり、試験にも出るところである。
で、私も、この場合の相続登記を経験したことがある。
戸籍を見て、相続関係説明図を作っていくと、被相続人に養子がいて、その養子は被相続人より先に死亡しており、そして、縁組前に結婚して(結婚相手は被相続人の実子ではない)いて、子供がいた。
思わず、試験勉強したことじゃん、実際にあるんだ…、と思った。
相続財産管理人
これから、台風10号がやってくるとのこと。
相続財産管理人といったら、相続人不存在のときと、すぐ思う。
実務でもある話であるし。
相続財産管理人は、相続人がいない、相続人がいるかいないか明らかではない、相続人はいたけど全員相続放棄をした、というような場合における家庭裁判所の手続き(民952)。
相続財産管理人は、相続人を探したり、債権者に弁済したり、特別縁故者に財産分与をしたり(特別縁故者からの申し立てがあった場合)して、相続財産を清算していく。
残った財産は、国庫に帰属される。
被相続人の相続財産は、法人となる(民951)。
具体的には、「亡○○相続財産」という法人になる(○○は被相続人の氏名)。
また、これは、不動産登記にも関係している。
民法952条により相続財産管理人が選任され、その被相続人が不動産を所有している場合は、相続財産管理人は、その不動産の登記名義を「亡○○相続財産」と変更する氏名変更登記を申請する。
なお、被相続人の相続財産管理人の選任審判書上の住所と登記上の住所が違っていれば、住所変更登記も必要となる。
不動産が特別縁故者に分与された場合は、所有権移転登記をする。
なお、以前、家庭裁判所の相続財産管理人の選任審判書は資格証明書も兼ねているのだから3ヶ月以内のものが必要、と某法務局から言われたことがあった。
しかし、確か、これについては期限はないと理解している。
一方、何年か前だかのある研修で、民918条2項の相続財産管理人というのを聞いた。
これは、簡単に言えば、相続人の熟慮期間中に、被相続人の財産を管理する者を選任する、というものである。
相続財産管理人=相続人不存在、という思い込みがあったので、相続人がいるのに相続財産管理人って何?と思ったが、そういう規定があったのであった。
そして、これと成年後見が絡む。
具体的には、被後見人等が死亡すると成年後見業務は終了し、成年後見人等は管理していた被後見人等の財産を相続人に引継がなければならないが、成年後見人等は被後見人等が死亡すると財産管理権限がなくなるので、相続人に引き継ぐまでの間に時間がかかりそうというような事情があれば、これを利用できるのではないか、ということだった。
ようは、相続人に引き継ぐまでの中継ぎとして、被後見人等の財産を権限をもって管理する者を選んでおく、といった感じである。
被後見人が死亡したときに、裁判所からきた連絡文書にも、「相続人不存在であることが判明した場合や相続人は存在するが同人から受領を拒絶されるなど引継に何らかの支障がある場合には、相続財産管理人の選任(民952、918条2項)の申立てをしてください」というようなことが記載されていた。
確かに、元後見人等が権限がないまま管理するよりも、権限を持つ相続財産管理人を選任してその者が財産を管理した方が安全ではある、と思う。
これって、実務上、どれくらい利用されているのでしょう。
「家庭裁判所における成年後見・財産管理の実務(第2版)」という書籍では、この相続財産管理人について、相続の承認又は放棄前の相続財産の管理者として、255ページから259ページまでに記載があった。
約4ページの記載。
相続放棄の申述の有無の照会
人が死亡すると、相続が開始する(民法第882条)。
そうすると、相続人は、被相続人の権利義務を承継する。
相続人は、相続について、次の三つを選択できる。
(1)単純承認:相続人が被相続人の権利義務をすべて承継する(民920)
(2)限定承認:被相続人の債務が不明で、財産が残りそうなとき等に、相続人が相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務を承継する(民922)
(3)相続放棄:相続人は被相続人の一切の権利義務を承継しない。最初から相続人ではなかったものとみなす(民939)
相続財産は、プラス財産だけではなく、借金といったマイナス財産も含む。
なので、借金の方が多い場合は、相続したくないと思うだろう。
そういう場合に、相続放棄がある。
○相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三ヶ月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる(民915条1項)。
○相続人が第915条1項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったときは、単純承認をしたものとみなす(民921条2号、920)。
○相続の放棄をしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない(民938)。
○相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす(民939)。
というわけで、相続放棄をしようと思ったら、自分のために相続の開始があったことを知った時から原則三ヶ月以内(熟慮期間という)に、家庭裁判所(被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所)に申述をしなければならない。
また、被相続人の財産を処分(保存行為は除く)すると単純承認をしたとみなされることもあり(民921条1号)、そうすると相続放棄はできなくなるので、相続放棄をしようと思う相続人は、被相続人の財産には一切手をつけないほうがいい。
相続放棄をしたら、その者は相続人ではなくなるので、例えば、第一順位の相続人(被相続人の子供(代襲相続人も含む))が全員相続放棄したら、第二順位の相続人(被相続人の親、祖父母の直系尊属)が相続人となる。
なので、今度は、第二順位の相続人が、相続放棄をするかどうか決める。
第二順位の相続人が既に死亡していなかったり、あるいは、相続放棄をしたら、今度は、第三順位の相続人(被相続人の兄弟姉妹(代襲相続人も含む))がどうするかを決める。
ということになる。
このように、被相続人の相続人が相続放棄をしたかどうかは、他の相続人や、被相続人の債権者にとっては重要な問題となる。
相続人が、相続(単純承認のこと)したよ、とか、相続放棄をしたよ(申述受理証明書を送る)とか知らせてくれればいいが、そうじゃないと困る場合もあろう。
そういう場合に、被相続人の相続人や利害関係人は、家庭裁判所に対して、「相続放棄・限定承認の申述の有無の照会」ということができます。
これにより、相続放棄をした相続人がいるかどうかわかります。
具体的な方法については、例えば、東京家庭裁判所のサイトを参照してください。
相続の相談で、「相続の放棄をする」と聞く場合があります。
こちらからすると、相続の放棄とは上記のこと、つまり、家庭裁判所において申述することをいうので、「家庭裁判所で手続きされる(た)のですか?」と聞くと、「それはしない」、という。
では、どういうことかというと、要は、「自分は財産を相続しない、何もいらない」ということでした。もうちょっと言えば、「遺産分割協議をして、自分は何も相続しない」、ということです。
民法上の相続放棄とは意味合いが違っていますね。
同じ言葉でも、巷間言われる意味と法律上の意味が違う場合の一例といえるでしょうか。
同じように言葉に、「善意」もありますね。
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