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都営住宅と成年後見

都営住宅を借りて住んでいる人(賃借人、名義人)の成年後見人等になったとき。
都営住宅に関することは、東京都住宅供給公社(JKK)が取扱っている。

(1)都営住宅に関する書類を預かる
都営住宅を借りていることが分かる何かしらの資料を預かれるなら、預かる。
名義人番号というのがあるので、それが分かれば、初期の手続き時に助かる。

 

(2)東京都住宅供給公社に、成年後見届をする
東京都住宅供給公社の該当する窓口センターに行って、手続きをする。
(この手続きを、郵送でできるかどうかは、分からない。)

これにより、後見人等が手続きを行うことができるようになり、また、書類も成年後見人等に届くようになる。
但し、成年後見人等に送られるのは重要な書類のみで、そうでないような書類、例えばたんなる通知のようなものは、成年後見人等には送られず、本人に送られるとのこと。

立川に、東京都住宅供給公社の立川窓口センター(受持ち地域:立川市、青梅市、昭島市、国分寺市、国立市、福生市、東大和市、武蔵村山市、羽村市、瑞穂町)がある。

 

(3)使用料が銀行等の引落としになっているとき
成年後見人等になったら、銀行等の金融機関に対して、成年後見届をするが、これにより、金融機関によっては、口座名義が「○○成年後見人□□」となるところがある。

都営住宅の使用料が銀行等の口座引き落としになっていて、この銀行等に成年後見届をしたら上記のように口座名義が変わるような場合は、使用料の引き落しができなくなるとのこと。
なので、こういう場合は、引落し口座の名義変更をする必要がある(名義を変えるだけで、口座そのものを変えるわけではない)。
(使用料が引き落とされている金融機関が、こういうことを把握していれば、その旨の説明があり、口座変更の書類も渡してくれる。)

 

(4)世帯に変更が生じた場合
例えば、配偶者が施設に移って住民票も移した場合、その手続きが必要で、「都営住宅名義人及び名義人の配偶者一時転出届」を提出する。
この届の用紙は、JKKのサイトからダウンロードできる。
この届には、
転出理由が確認できる書類(施設入所証明、入院証明等)と住民票が必要となる。
なので、こういうことが生じた場合は、配偶者の入居した施設に、入所証明書を発行してもらうように依頼する必要があり、また、配偶者の住民票も取らないとならない。
配偶者にも成年後見人等がついていたら、その成年後見人等に事情を説明し、手配してもらうよう依頼する。

この転出期間は1年とのことなので、1年経過しても配偶者が戻れない場合は、また、「転出届」を提出するとのこと。

 

(5)使用料の減免申請
所得が低い、収入が減少したような場合、使用料の減免申請というのができるので、これを検討し、減免申請をしたほうがいいなら、申請をする。
既に減免を受けている場合は、継続の減免申請書が、減免期間が終了する月の前月の20日頃に送られてくるので、手続きをする。
これは、成年後見人等に送られてくる。

この減免申請には、住民票(世帯全部、続柄記載のもの)や世帯全員の住民税の課税証明書(非課税証明書)等が必要になる。
なので、被後見人等が確定申告や住民税申告が不要の場合であっても、どちらかはしておいたほうがいいと思う。
なお、住民税申告よりも確定申告の方がやりやすいし、確定申告をすれば住民税申告は不要なので、個人的には、確定申告をするようにしている。

課税証明書・非課税証明書は、住民票上同一世帯の者であれば、申請し取得できるとのこと。
なので、本人の成年後見人として、本人の非課税証明書と同一世帯の者の非課税証明書も申請できることとなる。

本人の配偶者が施設に移って住民票も移したような場合。
本人と配偶者が住民票上別世帯になったとしても、減免申請にあたっては、配偶者についても、非課税証明書等の書類は必要になるとのこと。

ところが、この場合、現在は本人と配偶者は世帯が別なので、非課税証明書が必要な年度のときは同一世帯であったとしても、本人の成年後見人等は、配偶者の非課税証明書は取れないとのこと。
この場合は、配偶者にとってもらうか、配偶者から委任を受ける必要がある。
配偶者にも成年後見人等がついていたら、その成年後見人等に事情を説明して、手配してもらうよう依頼する。

減免期間は、人によって、半年だったり1年だったりと違うとのことだが、例えば減免期間が半年だったら、使用料の減免を継続して受けたいのなら、半年ごとに申請をする必要がある。

特別縁故者への相続財産の分与

 

被相続人の相続人不存在の場合、その手続きの流れの中で、特別縁故者は、家庭裁判所に対して、被相続人の財産の分与の請求ができる。
そして、家庭裁判所は、相当と認めるときは、特別縁故者に対して、相続財産の全部または一部を分与することができる。(民法第958条の3)

被相続人が不動産を所有しており、特別縁故者に対して、その不動産の分与が認められた場合、以下の登記手続きが発生する。

(1)相続財産への所有権登記名義人氏名変更登記
(2)特別縁故者に対する所有権移転登記

被相続人をAとする。
(1) 所有権登記名義人氏名変更登記
相続人不存在により、相続財産は法人となり(民法第951条)、家庭裁判所により、相続財産管理人が選任される(民法952条第1項)。
具体的にいうと、被相続人Aの相続財産は、「亡A相続財産」となる。
また、相続財産管理人が選任されたら、家庭裁判所から、相続財産管理人が選任された審判書が交付される。
この審判書は、登記で使用する(登記原因証明情報、代理権限証明情報)。

不動産登記上、この亡A相続財産への登記は、「所有権登記名義人氏名変更登記」とされているので、所有権登記名義人を「亡A相続財産」と変更する所有権登記名義人氏名変更登記を申請する。

相続財産管理人選任審判書に記載されている被相続人の最後の住所と所有権登記名義人の住所とが違う場合は、この住所の変更登記も必要となる。
従って、この場合は、「所有権登記名義人住所氏名変更登記」を申請することとなる(住所の繋がりをつける戸籍の附票等が必要)。

この変更登記の原因は、「年月日相続人不存在」(年月日はAの死亡日)。
被相続人の死亡日は、相続財産管理人選任審判書に記載されている。
申請人は、相続財産管理人。

(2) 特別縁故者に対する所有権移転登記
特別縁故者への財産分与は、家庭裁判所の審判となり、特別縁故者への財産分与が認められたら、家庭裁判所から、その旨の審判書が出る。
また、審判なので、確定する必要がある。
審判確定によって、特別縁故者への相続財産の分与が確定し、この確定日が、登記原因日付となる。
この所有権移転登記の登記原因は、「年月日民法第958条の3の審判」(年月日が審判確定日)。

特別縁故者への相続財産分与の審判書正本(確定証明書付)は登記原因証明情報であり、これを添付すれば、特別縁故者は単独で登記申請が可能となる。
なので、家庭裁判所で、確定証明書を取っておく必要がある。

また、所有権移転登記なので、登録免許税は、不動産の評価額を元に算出する。
なので、評価証明書が必要となるが、特別縁故者への相続財産分与が確定した以降は、特別縁故者が不動産の所有者となるので、評価証明書は特別縁故者が取得することができる。
この場合は、特別縁故者であることの証明として、家裁の相続財産分与の審判書も必要となる。


司法書士がこれらの登記を受任した場合。
特別縁故者が確定証明書を取得していなかったら、審判の確定証明書の申請書を司法書士の方で作成するか、または、家裁のWebサイトで申請書をダウンロードできるならそれを使い、特別縁故者に申請書等に署名・押印をしてもらい、司法書士の方で確定証明書の申請・受領をしてもいいでしょう。
なお、確定証明書には、収入印紙150円が必要。

評価証明書も、司法書士の方で取るならば、特別縁故者から委任状をもらい、特別縁故者への相続財産分与の審判書(と確定証明書)を添付して、市役所等に申請して取得する。

(1)の必要書類
相続財産管理人の選任審判書
相続財産管理人から司法書士への委任状

(2)の必要書類
特別縁故者への相続財産分与の審判書正本と確定証明書
特別縁故者の住民票
特別縁故者から司法書士への委任状
(特別縁故者の単独申請とするため、登記義務者(亡A相続財産)の書類は不要)

登録免許税の還付

5月になって、新元号「令和」が始まった。

登記申請を取下げたり、あるいは登録免許税を納めすぎていた場合は、登録免許税の全部または一部の還付を受けることができる。
この還付金は、登記申請代理人が代理受領できるが(還付通知請求・申出書を記載し、署名押印して法務局に提出する)、この場合は、委任状が必要。
しかし、登記申請時の委任状に、代理人に還付金を受領する権限を与えている記載がある場合は、新たに委任状は不要とのこと。
この場合、申出書の備考欄の添付書類の「還付金の代理受領権限を証する委任状」については、「申請時の委任状を援用」と記載するとのこと。

というわけで、登記申請の委任状には、「登録免許税の還付金を受領すること」といったような文言を必ず入れておいたほうがいい。


登記申請時の登録免許税を、収入印紙で納付して、その登記を取下げた場合。
登録免許税の還付の他に、「再使用証明」というものもある。
登記申請を取下げたら、消印された収入印紙が返ってくるが、それを再度使用できるようにするのが、再使用証明。
但し、再使用証明が使えるのは、同じ法務局内での登記申請に限られ、有効期間は1年。