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特別縁故者への相続財産の分与

 

被相続人の相続人不存在の場合、その手続きの流れの中で、特別縁故者は、家庭裁判所に対して、被相続人の財産の分与の請求ができる。
そして、家庭裁判所は、相当と認めるときは、特別縁故者に対して、相続財産の全部または一部を分与することができる。(民法第958条の3)

被相続人が不動産を所有しており、特別縁故者に対して、その不動産の分与が認められた場合、以下の登記手続きが発生する。

(1)相続財産への所有権登記名義人氏名変更登記
(2)特別縁故者に対する所有権移転登記

被相続人をAとする。
(1) 所有権登記名義人氏名変更登記
相続人不存在により、相続財産は法人となり(民法第951条)、家庭裁判所により、相続財産管理人が選任される(民法952条第1項)。
具体的にいうと、被相続人Aの相続財産は、「亡A相続財産」となる。
また、相続財産管理人が選任されたら、家庭裁判所から、相続財産管理人が選任された審判書が交付される。
この審判書は、登記で使用する(登記原因証明情報、代理権限証明情報)。

不動産登記上、この亡A相続財産への登記は、「所有権登記名義人氏名変更登記」とされているので、所有権登記名義人を「亡A相続財産」と変更する所有権登記名義人氏名変更登記を申請する。

相続財産管理人選任審判書に記載されている被相続人の最後の住所と所有権登記名義人の住所とが違う場合は、この住所の変更登記も必要となる。
従って、この場合は、「所有権登記名義人住所氏名変更登記」を申請することとなる(住所の繋がりをつける戸籍の附票等が必要)。

この変更登記の原因は、「年月日相続人不存在」(年月日はAの死亡日)。
被相続人の死亡日は、相続財産管理人選任審判書に記載されている。
申請人は、相続財産管理人。

(2) 特別縁故者に対する所有権移転登記
特別縁故者への財産分与は、家庭裁判所の審判となり、特別縁故者への財産分与が認められたら、家庭裁判所から、その旨の審判書が出る。
また、審判なので、確定する必要がある。
審判確定によって、特別縁故者への相続財産の分与が確定し、この確定日が、登記原因日付となる。
この所有権移転登記の登記原因は、「年月日民法第958条の3の審判」(年月日が審判確定日)。

特別縁故者への相続財産分与の審判書正本(確定証明書付)は登記原因証明情報であり、これを添付すれば、特別縁故者は単独で登記申請が可能となる。
なので、家庭裁判所で、確定証明書を取っておく必要がある。

また、所有権移転登記なので、登録免許税は、不動産の評価額を元に算出する。
なので、評価証明書が必要となるが、特別縁故者への相続財産分与が確定した以降は、特別縁故者が不動産の所有者となるので、評価証明書は特別縁故者が取得することができる。
この場合は、特別縁故者であることの証明として、家裁の相続財産分与の審判書も必要となる。


司法書士がこれらの登記を受任した場合。
特別縁故者が確定証明書を取得していなかったら、審判の確定証明書の申請書を司法書士の方で作成するか、または、家裁のWebサイトで申請書をダウンロードできるならそれを使い、特別縁故者に申請書等に署名・押印をしてもらい、司法書士の方で確定証明書の申請・受領をしてもいいでしょう。
なお、確定証明書には、収入印紙150円が必要。

評価証明書も、司法書士の方で取るならば、特別縁故者から委任状をもらい、特別縁故者への相続財産分与の審判書(と確定証明書)を添付して、市役所等に申請して取得する。

(1)の必要書類
相続財産管理人の選任審判書
相続財産管理人から司法書士への委任状

(2)の必要書類
特別縁故者への相続財産分与の審判書正本と確定証明書
特別縁故者の住民票
特別縁故者から司法書士への委任状
(特別縁故者の単独申請とするため、登記義務者(亡A相続財産)の書類は不要)


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