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日別アーカイブ: 2016年8月22日

判決による登記

台風。
朝から風雨がだんだん強くなり。夕方の今は、静かになっている。
立川市に、土砂災害警戒情報が発令された。
そのため、立川市の一部地域に対し、避難準備情報が出された。

先に、離婚による財産分与のことを書いた。
その離婚は、協議の他、調停でも行われることがある。
調停により離婚が成立した場合、調停条項に、夫が不動産を妻に分与し、所有権移転登記をするするといったことがきちんと記載されていれば、この調停調書に基づいて、妻が単独で所有権移転登記ができる。

不動産登記法第63条1項

第60条(中略)の規定にかかわらず、これらの規定による申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続きをすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。

ここにいう確定判決とは、確定判決の他、確定判決と同じ効力を有する和解調書や調停調書等も含まれる。
そして、この規定により、確定判決や調停調書等に基づいてする登記を、判決による登記、と言っている。


不動産登記は共同申請が原則である。
夫が妻に不動産を財産分与する場合は、夫(登記義務者)と妻(登記権利者)が共同して所有権移転登記を申請する。
この場合、夫は、登記済証・登記識別情報と印鑑証明書が必要になる。
しかし、判決による登記の場合、妻が単独で所有権移転登記を申請できることとなる。
この場合、夫の登記済証・登記識別情報や印鑑証明書は不要となる。
というのも、判決等によって、登記義務者の登記申請意思が擬制されているので。

なお、この場合でも、登記原因証明情報(判決正本と確定証明書、調停調書)、妻の住民票は必要である。

この判決による登記に注意点がある。
それは、判決の主文や調停条項等に、登記の内容、登記原因とその日付、当事者、登記事項、不動産等、登記に必要な事項がきちんを記載されている必要があり、かつ、一方当事者に対して登記手続きをするよう命じていなければならない、ということである。
この点をきちんとしておかないと、いざ登記を申請しても、登記ができなかった、なんてことにもなりかねない。

例えば、売買で、買主が売主を訴えたとすると、こんな感じの判決主文になります。
被告は原告に対して、別紙不動産目録記載の不動産について、平成○年○月○日売買を原因とする所有権移転登記手続きをせよ。

例えば、調停離婚であれば、こんな感じの調停条項になります。
申立人(夫)は相手方(妻)に対し、別紙不動産目録記載の不動産について、本日(*)付財産分与を原因とする所有権移転続きをする。

(*)調停成立日

夫が妻に不動産を財産分与する場合。
夫の今の住所が登記上の住所と変わっていた場合、財産分与による所有権移転登記の前提として夫の住所変更登記が必要になる。
調停調書に両住所が併記されていても、これを省略できない。
そして、この夫の住所変更登記は、夫が単独で申請する登記である。
夫が住所変更登記に協力してくれればいいが、そうでなければ、妻が夫に代わって(債権者代位で)、夫の住所変更登記を申請することができる。
この場合、夫の住民票等(登記上の住所と現住所のつながりをつける)が必要になりる。
登記を司法書士に委任すれば、この住民票は司法書士が職務上請求で取得する。
一方、妻ご自身で登記される場合は、妻は利害関係人に該当するでしょうから、役所に調停調書等を提出して説明すれば取得できるものと思われる(この経験がないので分かりません)。